「ドッグフードをふやかすお湯って、何度がいいんだろう」。うちのパフィ(ポメプー・メス・2歳・5.12kg)を生後3ヶ月で迎えたとき、僕もこれを検索しました。出てくる記事はどれも「30〜40℃のぬるま湯で10〜15分」と書いてあって、そのとおりにやったら、15分たっても粒の芯が残っていたんです。
気になってメーカーの公式ページを8ブランドぶんあたってみました。すると、ロイヤルカナンは60度程度、ヒルズは37度程度と書いていて、数字が倍近く違う。しかも8ブランドのうち5つは、ふやかし方に一言も触れていませんでした。
読み比べていくうちに、60度と37度は矛盾していないことが分かりました。測っている場所が違うんです。 その話と、うちがふやかしをやめるまでの半年を書きます。
ドッグフードをふやかすお湯は60度まで大丈夫です

ドッグフードをふやかすお湯は、60度までなら問題ありません。ロイヤルカナンの公式FAQが「ふやかす場合は、約60度以下のお湯をお勧めいたします」と明記しています。理由は水溶性ビタミンなど熱に弱い栄養素があるためで、避けるべきなのは熱湯です。
同じページに、ドライフードをふやかすことで栄養成分が変化することはない、と書いてあるのを見つけて、正直ちょっと拍子抜けしました。
ネットの記事はほぼ全部が「熱いお湯でふやかすと栄養が壊れる」と書いています。その心配の当事者であるはずのメーカーが、真っ向から「変化しない」と言っている。しかも高熱を避ける理由として挙げているのは、栄養だけではありません。高熱はタンパク質の変性を起こして嗜好性に影響することがある、とも書かれています。食いつきの話なんですね。
8ブランドの公式ページを見て回った結果がこれです。
| ブランド | ふやかし方の記載 | お湯の温度 |
|---|---|---|
| ロイヤルカナン | あり(FAQ2ページ) | 約60度以下・60度程度 |
| ヒルズ | あり(ふやかし方の図) | 食べるときに37度程度 |
| このこのごはん | あり(幼犬・高齢犬の項) | 水かぬるま湯(数値なし) |
| カナガン | なし | — |
| モグワン | なし | — |
| ソルビダ | なし | — |
| ミシュワン | なし | — |
| ペットライン | なし | — |
温度の数字を出しているのは、8ブランドのうち2つだけでした。
60度と37度は矛盾していません。測っている場所が違います
ロイヤルカナンの60度とヒルズの37度は、どちらも正しくて、ぶつかっていません。60度は注ぐお湯の温度、37度は犬が口をつけるときの温度だからです。ロイヤルカナンの子犬向けFAQを読むと、両方が1つの文章に並んでいます。
ドライフードの重さの2倍の量のぬるま湯(60℃程度)を注ぎ、15分ほどふやかしていただくことをおすすめします。
そのすぐ後ろには、食べさせる前に温度を確認して火傷しないように気をつけること、人肌くらいの温度がおすすめ、と続きます。
つまり60度で15分ふやかして、人肌まで冷ましてから出す。ヒルズが「ぬるま湯は、食べるときに37度程度がオススメです」と書いているのは、この後半だけを指しています。人肌はだいたい37度なので、2社は同じことを言っているわけです。
ここが競合記事とずれているところだと思います。「30〜40℃のお湯でふやかす」という書き方は、この2つの温度を1つに潰してしまっている。30度台のお湯で15分待っても芯が残るのは、当たり前だったんです。 僕が最初につまずいたのはここでした。
ちなみにロイヤルカナンは、フードを温めるときの上限も別に書いています。温める際に70℃を超えると一部の栄養素を損ねるおそれがあるので温めすぎに注意、という一文です。
70度です。40度ではありません。境界線は思っていたよりずっと高いところにありました。
お湯の量と時間も、2社で数字が違います。
| ロイヤルカナン | ヒルズ | |
|---|---|---|
| お湯の温度 | 60度程度 | (食べるときに37度程度) |
| お湯の量 | フードの重さの2倍 | フード1gにつき4cc・重量で1:3 |
| 時間 | 15分ほど | 5〜15分 |
| 30gのフードなら | ぬるま湯60cc | ぬるま湯120cc |
| 早くする方法 | 冬場は食器にアルミホイルで蓋 | フードを細かく砕いておく |
ヒルズの図には「1g:4cc」の表と「重量で1:3くらい」の一文が両方あるので、3〜4倍のあいだで好みに寄せてください、という読み方になります。ロイヤルカナンも「上記のぬるま湯の量や時間は一例ですので、愛犬の好みに応じてふやかし方を調整ください」と添えています。どちらも幅を持たせていて、1つの正解を示していません。
メーカーで数字が違うのは、書く義務が無いからです

同じ「ふやかす」なのに答えが割れているのは、メーカーが不親切だからではありません。ふやかしの温度と時間は、法令上の表示義務に入っていないからです。
ペットフードの袋に何を書くかは「ペットフードの表示に関する公正競争規約」(令和4年9月28日・公正取引委員会告示第8号)が決めています。必要表示事項は9つで、名称・目的・内容量・与え方・賞味期限・成分・原材料名・原産国名・事業者名と住所。「与え方」はちゃんと入っています。
ただ、ペットフード公正取引協議会が説明する「与え方」の中身は、目的や年齢・体重によって1日に与える量も回数も変わるので、文章・表・図を組み合わせてわかりやすく表示する、というものでした。
求められているのは1日に与える量と回数であって、ふやかす温度でも時間でもありません。だからカナガンもモグワンもソルビダも、袋にも公式ページにもふやかしの話を書かずに済んでいる。書いていないのはルール違反ではないんです。
袋を見れば正解が載っていると思っていたので、これは意外でした。表示ルールの読み方はドッグフードの一般食と総合栄養食の違いとオールステージ表示の読み方にもまとめています。
ふやかす手順は3つだけです
公式2社の書き方をそろえると、やることは3つに落ち着きます。
- 1回で食べきる量を、ドライの状態で量る。 ヒルズは「1度に食べきれる量を、都度ふやかしましょう」と書いています。まとめて作らないのが前提です
- 60度くらいのお湯を、フードの2〜3倍そそぐ。 30gなら60〜120cc。粒が浸る程度が目安です
- 5〜15分待って、人肌まで冷ましてから出す。 指を入れて熱くなければだいたい大丈夫です
早くしたいときの方法も、両社が書いています。ロイヤルカナンは「冬場などぬるま湯が冷めてしまいふやけにくい場合は食器にアルミホイルで蓋をするとふやけやすくなります」、ヒルズは「フードを細かく砕いておくと、より早くふやかせます」。砕くのは2社の唯一の一致点でした。粒の芯が残るときは、温度を上げるより先に砕いたほうが早いです。
うちでいちばんつらかったのは、ふやかす時間より冷ます時間でした

パフィを迎えたのは生後3ヶ月ごろで、そのとき使っていたのはソルビダのグレインフリー チキン 室内飼育の子犬用でした。カリカリのままだと食べにくそうで、ぬるま湯でふやかすと香りが立って、ようやく鼻を近づけてくれる。あの匂いの変わり方は、今でもよく覚えています。

で、実際にやってみて何がしんどかったかというと、ふやかす10分ではありませんでした。そのあとの、冷めるのを待つ時間です。
お湯でふやかすので、10分たった時点ではまだ熱い。そこから人肌まで下がるのを待つと、さらに5分から10分かかります。子犬期は1日3〜4回なので、これが毎回。目の前でパフィが待っているのに「まだ熱いよ」と言い続ける15分は、地味にきついんです。
いま振り返ると、ここは工夫できたと思っています。ヒルズが言うとおり粒を砕いておけば短い時間でふやけるし、量を少なめのお湯で始めれば冷めるのも早い。当時の僕は「たっぷりのお湯で長めに」が丁寧だと思い込んでいて、自分で待ち時間を伸ばしていました。
これから子犬期のフードを選ぶなら、粒の大きさも見ておくと待ち時間が変わります。砕きやすい粒なら、ふやけるのも冷めるのも早く済みます。
ふやかしにかかる時間は、ふやかす時間と冷ます時間の合計です。 これを最初から知っていたら、もう少し楽でした。
公式は7〜8週齢で卒業、うちは生後4〜6ヶ月かかった
「生後3〜4ヶ月まで」と書いている記事が多いのですが、ロイヤルカナンの公式FAQはもっと早い時期を挙げています。7〜8週齢くらいで離乳が完了して固形のドライフードを食べられるようになり、この時期以降はふやかす必要がない、という書き方です。
7〜8週齢は生後2ヶ月弱です。離乳期は4〜7週齢で、そこを抜ければ固形が食べられる、という整理ですね。ただし、そのすぐ後ろに現実的な但し書きが付きます。お迎え元でふやかしていた場合はいきなり固形に変えず、1〜2週間ふやかしを続けて、新しい環境に慣れてきたら徐々にふやかさないドライへ移していく、という案内です。
うちはまさにこのパターンでした。生後3ヶ月で迎えたときにはすでにふやかされていて、そこから急にカリカリに戻す勇気はなかった。結局、はっきり卒業させた日はなくて、生後4〜6ヶ月ごろに自然とふやかさなくなっていました。 公式の目安より2〜4ヶ月遅いです。
迎えた日からふやかしを続けている家は、卒業を急がなくて大丈夫です。粒を噛めているかどうかを見ながら、少しずつ水を減らしていってください。
子犬用フードから成犬用に切り替える時期の考え方は子犬のご飯の量と回数に月齢別で書いています。
そして、ふやかしは子犬だけの話でもありません。うちが以前馬肉自然づくりの楽天レビュー105件を全部読んだとき、ふやかしに触れていたレビューが14件、シニアに触れていたものが24件ありました。歯が弱くなった犬や、食が細くなった犬の飼い主が、日常的に使っている手なんです。年齢で線を引くより、粒を噛めているかどうかで判断するほうが実態に合います。
噛む力が落ちてきた犬向けには、最初から柔らかい形の総合栄養食もあります。舌でつぶせる硬さのムースや、高齢犬用に調整した粉ミルクは、ふやかしの手間ごと省ける選択肢です。
噛む力が落ちてきた子には、ふやかす手間ごと省く選び方があります。舌でつぶせる硬さなら、お湯の温度で迷う時間がそのままなくなります。
粒を残すようになったのが歯のせいなら、最初から柔らかいものに替えるほうが早いです。飲み込む力に合わせて形を選べます。
デメリットに挙がる歯石は、ふやかす前から前提が崩れています

ふやかしのデメリットとして必ず出てくるのが「歯石がつきやすくなる」です。ただこれ、カリカリのままなら歯石を防げるという前提の上に乗っています。その前提が、思ったより弱い。
うちで犬の歯石予防フードを調べたとき、米国獣医口腔衛生協議会(VOHC)の認定製品一覧を数えました。歯垢や歯石を減らすと審査を通ったフードは12製品で、そのうち半分の6製品は動物病院でしか買えません。日本の店で普通に買えるものまで絞ると、残ったのは3本でした。
つまり、ふつうのドライフードは、そのまま食べさせても歯石予防の効果を審査で認められてはいません。ふやかしてもふやかさなくても、歯石対策としては同じ土俵ということです。歯石を心配するなら、フードの形状より歯磨きのほうがずっと効きます。パフィは毎晩3分磨いていて、歯磨きをしないとどうなるかを調べてからは、ここだけはサボらないようにしています。
「噛む力が衰える」もよく挙がりますが、こちらは根拠になる調査を見つけられませんでした。書いていない、という事実だけ置いておきます。
「栄養素が壊れる」の中身を分解すると、残るものが少なくなります
ふやかしを避ける理由の筆頭が「栄養素が壊れる」です。ここは3つに分けて考えると見通しがよくなります。
1つ目。メーカー自身が否定しています。 ロイヤルカナンの「ドライフードをふやかすことで栄養成分が変化することはございません」がそれで、同じ会社が示す注意ラインは70度でした。60度のお湯は、その内側です。
2つ目。ドライフードは、作られるときにもっと高い温度を通っています。 カリカリの多くは押出成形(エクストルーダー)で作られていて、シェフドッグの公式は一般的なドッグフードの高温高圧製造を130〜180度程度と説明しています。自社の低温製法と比べるための数字なので割り引いて読む必要はありますが、それでも桁が違う。130度の工程を生き延びた成分が、60度のお湯で新たに壊れる余地はあまり残っていません。
3つ目。乳酸菌の心配は、その手前で崩れます。 「お湯で乳酸菌が死ぬ」と書かれることがありますが、そもそも市販のドライフードに生きた菌が入っているかどうかが怪しい。タフツ大学のPetfoodologyが紹介している北米の検証では、市販ドライペットフード19製品のうち、原材料表のとおりに生きた菌が入っていたものはゼロでした。入っていないものは、お湯でも死にません。
熱に弱いのは主に水溶性ビタミンで、これは事実です。ただ、それを気にする水準は40度ではなく60〜70度だった、というのがメーカーの書きぶりから読み取れることでした。
ふやかしたごはんで本当に気をつけるのは、置きっぱなしと給餌量です

温度よりも実害が出やすいのは、こちらの2つです。
置きっぱなしにしない。 ロイヤルカナンは「ふやかしたフードは早めに与える」、ヒルズは「1度に食べきれる量を、都度ふやかしましょう」と書いています。水分を含んだフードは常温で傷みやすいので、朝にまとめて作って夜にあげる、はやめたほうがいいです。うちも毎回その場で作っていました。手間ではありますが、ここは省きどころではありません。
量はドライの状態で量る。 ふやかすと、重さが一気に増えます。
| 量り方 | ドライ30gが仕上がる重さ | 元の何倍か |
|---|---|---|
| ロイヤルカナン方式(お湯2倍) | 約90g | 3倍 |
| ヒルズ方式(お湯4cc/g) | 最大150g | 5倍 |
ふやかした状態で「今日は90g」と量ってしまうと、実際に食べているのはドライ30g分しかありません。3分の1から5分の1しか与えていない計算になります。逆に、ドライの給餌量と同じ数字をふやかし後の重さで合わせると、今度は明らかに足りない。給餌量表の数字はすべてドライの重さなので、お湯を入れる前に量ってください。体重別の目安は子犬のご飯の量と回数にまとめています。
ふやかした水分は捨てずに、フードと一緒に与えます。ロイヤルカナンもそう書いていて、溶け出した分がそこに入っているからです。
ふやかすとかさが増えるぶん、一気に飲み込む量は減ります。それでも食べる勢いが変わらないなら、皿のほうを替える手があります。早食い防止食器の効果と比較で、食べ終わりまでの時間がどう変わるかをまとめました。
ふやかしても食べず、うちは半生タイプに落ち着いた
ここまで書いておいて何ですが、うちのパフィはドライフードへの完全移行ができませんでした。ふやかせば食べる、でもカリカリに戻すと残す。それを何度か繰り返して、最終的に半生(ソフト)タイプに落ち着いています。
正直、当時は「ふやかし方が下手なのかな」と思っていました。でもいま整理してみると、ふやかしは食感を変える手段の1つでしかなくて、それで食べないなら別の手段に移ればいい話でした。ふやかしにこだわって食べない日が続くほうが、よっぽど問題です。
半生タイプは最初から柔らかいので、待ち時間がゼロになります。うちが品切れのときに使ったのはドギーマンの無添加良品でした。
ふやかしても食べない日が続いているなら、そこで粘らずに形を変えてください。うちが品切れのときに使ったのがこれです。
- 価格
- 394円(税込)
- 単価
- 1袋200g(50g×4パック)
- メーカー
- ドギーマンハヤシ株式会社
- タイプ
- ドライフード
もっと水分の多いものに寄せるなら、冷凍のフレッシュフードという選択肢もあります。解凍は必要ですが、お湯の温度で悩む場面はなくなります。
水分の多い形まで寄せるなら、冷凍のフレッシュフードです。解凍の手間は残りますが、お湯を何度にするかで悩む場面はなくなります。
食べない理由がフードの硬さ以外にあることも多いです。うちの試行錯誤は犬がフードを食べない本当の理由と犬の偏食はフード選びで変わったに書きました。香りを足す方向で粘るならドッグフードのトッピング、別のフードに移るならドッグフードの切り替え方法が近道だと思います。ドライとウェットで何が違うのかはドッグフードのドライとウェットの違いにまとめました。
ふやかしは60度でつくって、37度で出す

ドッグフードをふやかすお湯は60度まで大丈夫です。ロイヤルカナンが「約60度以下」と書いていて、栄養が変化しないことも同じページで明言しています。37度は食べるときの温度で、この2つは別の場面の数字です。ネットで見かける「30〜40℃のお湯で15分」は、その2つを1つに潰した結果で、そのとおりにやると芯が残ります。
お湯の量はフードの2〜3倍、時間は5〜15分。急ぐなら粒を砕く。卒業の公式な目安は7〜8週齢ですが、迎え先でふやかしていたなら1〜2週間続けてから徐々に減らす。うちのパフィは生後4〜6ヶ月ごろに自然とやめました。
いちばん覚えておいてほしいのは、待ち時間が2回ぶんあることです。ふやかす時間と、冷ます時間。ここを見込んでおけば、目の前で待っている犬に「まだだよ」と言い続ける15分が、少しだけ短くなります。









