犬の肛門腺絞りって、どのくらいの頻度でやればいいんでしょうか。調べてみると「月1回は絞ってあげましょう」と書いてあるページがある一方で、動物病院のサイトには「すべての犬や猫に必要な処置ではありません」と書いてある。まったく逆のことが書いてあって、余計に迷いますよね。僕もそこで止まりました。
先に結論を書きます。肛門腺絞りの頻度は月1回が一般的な目安ですが、自力で出せている犬にはそもそも必要ありません。 だから最初に決めるのは回数ではなく、「うちの子は自力で出せているか」と「絞るとしたら誰がやるか」の2つです。
うちのパフィ(ポメプー・メス・2歳・5.12kg)は、月1回のトリミングに肛門腺絞りが含まれていて、追加料金はかかっていません。実は僕、その前に自分で絞ろうとして失敗しています。その顛末も含めて書きます。
肛門腺絞りの頻度は月1回が目安。ただし全部の犬に必要なわけではありません

肛門腺絞りの頻度は、溜まりやすい犬で2〜4週間に1回、肛門嚢炎を繰り返している犬で1〜2週間に1回が目安とされています。一方で、排便のたびに自力で出せている犬は原則として絞る必要がありません。「月1回が正解」という一律の基準はない、というのが今の獣医療の説明です。
湘南ルアナ動物病院は、犬のタイプ別に次のように整理しています。
| 犬のタイプ | 目安の頻度 |
|---|---|
| 自然に排出できる犬 | 原則不要 |
| 溜まりやすい犬 | 2〜4週間に1回 |
| 肛門嚢炎を繰り返す犬 | 1〜2週間に1回(獣医師と相談) |
(出典:犬の肛門腺絞りの頻度はどれくらい?適切なタイミングと注意点を解説 – 湘南ルアナ動物病院)
横須賀市のつだ動物病院はもう少し踏み込んでいて、「『月に1回程度の頻度で肛門腺を絞らなければならない』といった情報が広まっています。しかし、すべての犬や猫に必要なケアではありません」と書いています。
つまり検索して出てくる「月1回」と「必要ない」は、どちらも間違っていません。溜まる子には月1回、溜まらない子にはいらないという話を、それぞれ別の角度から書いているだけなんですよね。ここが分かってから、僕はやっと落ち着いて考えられるようになりました。
そもそも肛門腺は何のためにあるのか
肛門腺は、肛門の左右にある分泌腺です。時計の文字盤でいうと4時と8時の位置に、一対の袋があります。 この袋のことを正しくは肛門嚢(こうもんのう)と呼び、その内側の分泌腺が肛門腺です。日常会話では両方まとめて「肛門腺」と呼ばれることがほとんどなので、この記事でもそう書きます。
中に溜まるのは、茶色から灰色の、かなり独特なにおいの分泌液です。もともとはマーキングや個体識別のためのもので、野生では排便時の力みで自然に押し出されていました。犬同士が挨拶でお尻のにおいを嗅ぎ合うのは、ここのにおいを確認しているからです。
問題は、家庭で暮らす小型犬だと排出圧が足りず、自然には出しきれない子がいること。だから人の手で絞る、という手当てが生まれました。もともと自然に出るはずのものを、出せない子だけ手伝ってあげるという位置づけです。全頭に必要な処置ではない、という獣医師の説明はここから来ています。
絞ったほうがいい犬、しなくていい犬

溜まりやすいとされるのは、小型犬・肥満気味の犬・便がゆるくなりやすい犬・過去に肛門嚢炎になったことがある犬の4つです。 逆に、便が安定していてサインも出ていない犬は、無理に絞る必要はありません。
湘南ルアナ動物病院とつだ動物病院が共通して挙げている条件を並べると、こうなります。
| 条件 | 理由 |
|---|---|
| 小型犬(チワワ・トイプードル・ポメラニアンなど) | 排便時の押し出す力が弱く、自然排出が不十分になりやすい |
| 肥満気味 | 肛門まわりの脂肪で袋が圧迫されにくい |
| 軟便・下痢が続きやすい | 便が柔らかいと、通り道で袋が押されず溜まる |
| 肛門嚢炎の既往がある | 一度炎症を起こすと出口が狭くなり、繰り返しやすい |
| シニア期 | 筋力の低下で押し出す力が落ちる |
うちのパフィは1つ目と3つ目に当てはまります。ポメプーは体重5.12kgの小型犬ですし、便の調子はけっこう不安定です。柔らかいうんちが2〜3回続いたと思ったら、翌日はカチカチの小さいのが出る。1日に何回も出る日もあれば、1回で終わる日もある。獣医師には「そこまで気にしなくて大丈夫」と言われていますが、条件表で見ると溜まりやすい側の犬なんですよね。便の話は犬の下痢が続くときの見極めにまとめてあります。
条件に当てはまるからといって、必ず溜まるわけではありません。あくまで「気にかけておく側のグループに入る」というだけ。そのうえで、次に書くサインが出るかどうかを見ます。
溜まっているサインは床の上に出ます
代表的なサインは3つで、お尻を床に擦りつけて歩く、お尻をしつこく舐める、部屋やお尻から生臭いにおいがする、です。 どれも自宅の床の上で起きるので、家にいる飼い主が最初に気づける種類のサインです。
お尻を床につけて前足だけで進む動きは、スクーティングと呼ばれます。飼い主の間では「おしり歩き」「そりすべり」などと呼ばれることも多いですね。かゆみや違和感を自分でなんとかしようとしている動きなので、カーペットの上で繰り返しているなら一度お尻を見てあげてください。
つだ動物病院が注意すべき症状として挙げているのは、「床擦り行動」「過剰な舐め行動」「肛門周囲の腫れ、発赤、出血、または悪臭」です。腫れや出血まで出ている場合は、絞るかどうかの段階ではなく受診の段階になります。
正直に書くと、パフィはこのサインを一度も出したことがありません。 2年半一緒に暮らしていますが、お尻を擦って歩いたことも、お尻ばかり舐めていたこともない。抱っこしたときににおいで気づいたこともないです。だから僕はずっと肛門腺のことを気にしていませんでした。今にして思えば、月1回サロンで抜いてもらっていたから溜まる暇がなかった、という可能性もあります。
肛門腺を絞らないとどうなる?肛門嚢炎と破裂、受診の目安

溜まった状態が続くと肛門嚢炎を起こし、悪化すると皮膚が破れて穴があく肛門嚢破裂に進みます。 ただしこれは「絞らなかった犬に必ず起きること」ではなく、「溜まっているのに気づかれなかった犬に起きること」です。
進み方はだいたいこの順番。
- 分泌液が排出されずに袋の中に溜まる
- 違和感が出て、お尻を擦る・舐めるといった行動が増える
- 細菌が増えて炎症になる(肛門嚢炎)。肛門のまわりが赤く腫れ、排便しづらくなる
- 内圧が上がって皮膚が破れる(肛門嚢破裂)。出血と膿が出て、強い痛みが出る
アニコム損保のみんなのどうぶつ病気大百科も「炎症をおこしてしまい化膿しやすくなります」「悪化するとお尻の皮膚が破けてしまうこともあります」と書いています。鹿児島の中央愛犬病院のように、破裂の症例をブログで公開している病院もあります。
ここで大事なのは、「絞らない」には3つの意味があるということです。
- 自力で出せているから絞る必要がない(問題なし)
- サロンや病院で誰かが絞ってくれている(問題なし)
- 溜まっているのに誰も絞っていない(これが危ない)
自分がどれに当てはまるか分かっていない状態が、いちばん落ち着かないんですよね。僕もしばらくそうでした。
受診したほうがいいのは、肛門のまわりが赤い・腫れている、触ると痛がる、血や膿が出ている、元気や食欲が落ちている、といったとき。 ここまで来ていたら絞って様子を見るのではなく、動物病院に連れて行ってください。膿が出ている場合は洗浄や抗生物質での治療になります。診察にかかる費用の感覚は犬の医療費が実際いくらかかるかでまとめています。
頻度より先に決めたい「誰が絞るか」
回数を決める前に、サロン・動物病院・自宅のどこでやるかを決めたほうが、結果的に続きます。 頻度は、選んだ場所の予定に自動的についてくるからです。
3つの選択肢を費用で並べるとこうなります。
| 誰が絞るか | 費用の目安 | 頻度の決まり方 | 向いている家庭 |
|---|---|---|---|
| トリミングサロン | コースに含まれることが多い(うちは追加0円) | トリミングの周期がそのまま頻度になる | 定期的にカットが必要な犬種 |
| 動物病院 | 単独で1,100円の病院もあれば、診察料に含む病院もある | 自分で予約を取る必要がある | サロンに通わない短毛の犬 |
| 自宅 | 実質0円(おしりふきと手袋代のみ) | 自分で決める | 自宅でシャンプーをしている家庭 |
病院の料金は本当にばらつきます。
大阪の田辺獣医科病院は肛門腺絞りを1,100円(税込・2023年7月改定)と単独で設定していますが、藤沢の奥山動物病院は「診察料には爪切り・肛門腺絞り・耳掃除が含まれます」として初診料1,650円・再診料1,100円の中に入れています。同じ処置でも、単品で数えるか診察に含めるかで見え方が変わるので、通っている病院に一度聞いてみるのが早いです。
自宅を選ぶ場合、費用はほぼゼロですが、代わりに技術と度胸が要ります。
うちは月1回のトリミングに込みでお願いしています

パフィの肛門腺絞りは、月1回のトリミングの基本メニューに含まれていて、追加料金は発生していません。 トリミング代は1回8,500〜10,000円で、この中にシャンプー・カット・ブロー・爪切り・耳掃除・肛門腺絞りがまとめて入っています。
サロンからは毎回、溜まっているかどうかのメモがついてきます。ただそれだけで、「この子は溜まりやすいですね」とか「今日はよく出ました」といった指摘を受けたことは、2年間で一度もありません。パフィは自力である程度出せているタイプなんだろうな、と受け取っています。
この形に落ち着いてから、僕は肛門腺の頻度で悩まなくなりました。月1回という数字を自分で管理しているわけではなくて、トリミングの予約がそのまま肛門腺絞りの予定になっているだけなんですよね。カットは伸びれば分かるので予約を忘れません。忘れない用事に相乗りさせているから続いている、という感覚です。
同じ理由で、うちはシャンプーも爪切りもサロン任せです。北陸の冬は夜がかなり冷えるので、自宅で洗って乾かしきれる自信がなかった、というのが最初の理由でした。詳しくは犬のシャンプーの頻度をサロン任せで回している話に書いています。逆にブラッシング・歯磨き・涙やけ拭きは毎日自宅でやっていて、どこまでを家でやるかの線引きは自宅トリミングでどこまでやるかで整理しました。
トリミングに通っている人は、まず今のコースに肛門腺絞りが入っているか確認してみてください。 入っているなら、頻度の悩みはその時点でほぼ解決します。うちがそうでした。
自宅で絞る手順と、僕がうまくできなかった理由
自宅で絞る手順自体はシンプルですが、僕は一度試して出せませんでした。 できなかった話を先に書いておくと、この後の手順が読みやすいと思います。
やってみたのは、サロンに通い始めてしばらく経った頃です。ネットで手順を読んで、パフィの尻尾を持ち上げて、4時と8時のあたりを押してみました。結果は何も出ず。押す位置が合っているのか、力が足りないのか、それとも元から溜まっていなかったのか、自分ではまったく判断がつきませんでした。強く押して痛がらせるのが怖くて、そこでやめました。
それでモヤモヤしたまま、次のトリミングのときにサロンで聞いてみたんです。そうしたら「いつものプランの中で肛門腺絞りも行いますよ」とあっさり言われて、拍子抜けしました。心配していた期間、ずっと誰かがやってくれていたわけです。これは先に聞けばよかったなと反省しています。
一般的な手順は次のとおりです。
- ティッシュペーパーかトイレットペーパー、使い捨て手袋、拭き取り用のウェットシートを手元に用意する
- 犬を立たせた状態で、尻尾を上に持ち上げて肛門を見やすくする
- 肛門の左右、時計の4時と8時の位置を親指と人差し指で軽く挟む
- ティッシュで肛門を覆ったまま、下から上に押し上げるように、肛門の外へ向けて絞り出す
- 出たら、お尻まわりをウェットシートで拭いて終わり
大井町どうぶつ病院のトリマーは、「そのままゆっくりと下から押しあげるように力を入れると、肛門腺液が出やすい」「お尻を引っ込めてしまうと絞りにくいので、そういう場合はもう一人協力してもらうといい」と説明しています。同じ記事に「肛門腺のある位置もそれぞれ異なります」ともあって、これは僕が出せなかった理由の説明になっている気がします。
注意点も書いておきます。勢いよく飛び出すことがあるので、必ずティッシュで覆ったまま絞ってください。 服にも壁にも飛びます。それから、力任せに何度も押さないこと。出ないときは溜まっていない可能性のほうが高いので、いったんやめてプロに任せるほうが安全です。
シャンプーのついでにやると、飛んだ分も汚れもそのまま洗い流せるので合理的です。自宅で洗っている家庭なら、シャンプーの直前に組み込むのがいちばん無駄がありません。
自宅でやるなら、あると助かるのがこの2つです。
ペット用のウェットティッシュ
拭き取り用。アイリスオーヤマのペット用ウェットティッシュ DPWT-3Pは80枚×3パックで、19cm×14cmとお尻を拭くには十分な大きさ。ノンアルコール・無香料なので舐めても刺激が少ない作りです。人間用のウェットティッシュはアルコールや香料が入っていることがあるので、犬用と書かれたものを選んでください。
使い捨ての手袋
においが手に残るのを防げます。TKJPのニトリル手袋はパウダーフリーでSS〜Lまであり、楽天レビュー3,616件・評価4.57(2026年8月時点)。100枚から4,000枚まで選べるので、まずは100枚で十分です。
絞る回数を増やさないために家でできること
そもそも自力で出しやすい体をつくれば、絞る回数は自然に減ります。 ポイントは便の質と体重の2つで、どちらも肛門腺を押し出す力に直結します。
便が柔らかい日が続くと、通り道で袋が押されず溜まりやすくなります。逆に適度な硬さと量のある便が出ていれば、排便のたびに自然と押し出されるわけです。うちのパフィは便の調子が変わりやすいタイプなので、ここは意識しています。散歩の頻度を増やして飼い主が家にいる時間が長くなった時期に、お腹の調子がいちばん安定していました。
腸内環境を意識するなら、フードに混ぜられる整腸系のサプリを試す家庭が多いです。うちで候補にしているのは次の2つで、どちらも粉末をごはんにかけるだけなので、フードを丸ごと変えなくていいのが気に入っています。
- わんビオフェルミンS 40g
ビフィズス菌とアシドフィルス菌を配合したふりかけタイプで、原材料は5種類だけ。生後4か月から使えます - プラチナ乳酸菌5000α
1包にエンテロコッカス菌5000億個と、水溶性食物繊維の難消化性デキストリンを配合。味もにおいもほぼないので、偏食の子でも混ぜやすいタイプです
念のため書いておくと、サプリは食べ物であって薬ではありません。飲めば肛門腺が溜まらなくなる、というものではないです。お腹の調子を整える土台づくりとして考えてください。すでに炎症が起きている場合は、サプリではなく動物病院です。
体重のほうは、うちは獣医師から「この子は贅肉が多いわけではなく、ただ体の大きい子」と言われているので、いまのところ気にしていません。肋骨まわりの肉のつき具合を手でつまんで確認する方法を教わってからは、たまにチェックしています。そのたびにパフィには嫌がられます。
もう1つ、地味に効くのがにおい対策です。肛門腺の分泌液のにおいは、カーペットやソファに付くとなかなか消えません。うちはきえ〜る ペット用 消臭剤 280mlのような、成分表示がシンプルで香りでごまかさないタイプを選ぶようにしています。犬が舐める場所にかけるものなので、何が入っているか一目で分かる製品のほうが安心です。
耳や爪と同じで、肛門腺も「気づいたときにやる」より「決まったタイミングでまとめてやる」ほうが結局ラクです。うちの場合、毎日やること(ブラッシング・歯磨き・涙やけ拭き)と月1回サロンに任せること(シャンプー・カット・爪切り・耳掃除・肛門腺絞り)で完全に分けています。同じ考え方で頻度を決めた話は犬の耳掃除の頻度にも書きました。
頻度を数えるより、予定に乗せてしまうほうがラク

肛門腺絞りの頻度は月1回が目安。でも自力で出せている犬には必要ないし、溜まりやすい犬なら2週間に1回が必要なこともある。犬によって違う、というのが答えです。
だから僕は、回数を管理するのをやめました。月1回のトリミングに含まれていると分かった時点で、頻度の悩みは終わったからです。カットは伸びれば分かるので予約を忘れません。忘れない用事に相乗りさせるのが、いちばん確実でした。
自宅でやるなら、シャンプーの直前に組み込むのが合理的です。サロンに通っているなら、次の予約のときにコースの中身を聞いてみてください。もしかしたら、心配していたことはもう終わっているかもしれません。 うちがそうでした。






